日本では空き家の増加が深刻な問題となっており、その有効活用として注目されているのが「民泊」です。
しかし、空き家を民泊として活用するには、さまざまな初期費用やランニングコストが発生します。
この記事では、空き家を民泊として運営する際に必要な費用を、初期投資から運営費用まで詳しく解説していきます。
空き家を民泊にするための初期費用

空き家を民泊施設として利用するためには、事前に大きな初期投資が必要です。ここでは主に必要となる費用について項目ごとに解説します。
リフォーム・リノベーション費用
長期間使われていない空き家は、老朽化が進んでいるケースが多く、そのままでは宿泊施設として使うのは難しいです。
壁や床の張替え、水回りの修理、外壁の塗装など、最低限のリフォームは必須になります。
また、観光客のニーズに合わせた内装変更や、和風から洋風へのリノベーションも検討されることが多いです。
リフォーム費用の相場は、軽度で50万円〜100万円、全面的なリノベーションでは300万円以上になることもあります。
家具・家電の購入費用
宿泊者が快適に過ごすためには、家具や家電の準備が必要です。
ベッド、テーブル、イス、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機など、基本的な設備は揃えておく必要があります。
また、布団やシーツなどの寝具類も複数セットが必要になるでしょう。
これらの費用は、物件の広さにもよりますが、最低でも30万円〜50万円程度が目安です。
民泊用設備の導入費用
民泊ではチェックインシステムや鍵の受け渡し、セキュリティ対策など、特有の設備が必要です。
スマートロックや監視カメラ、無人チェックイン端末など、IT技術を活用することで運営の効率化が図れます。
特に無人運営を考えている場合、これらの導入はほぼ必須です。
設備導入には10万円〜30万円程度の費用がかかると考えておきましょう。
住宅宿泊事業法(民泊新法)や特区民泊の登録費用
民泊を始めるには、法律に基づいた手続きが必要です。
住宅宿泊事業法に基づいた届出や、自治体によっては「特区民泊」の申請が必要になります。
この登録には、書類作成や図面の用意などの専門的な対応が求められるため、行政書士などに依頼するケースも多いです。
登録費用や代行手数料を含めると、5万円〜15万円程度が目安です。
消防設備など安全対策の導入費が求められるから
宿泊施設として使用する以上、安全対策は不可欠です。
火災報知器や消火器、避難経路の確保など、消防法に基づいた設備の設置が義務付けられています。
地域によっては消防署の立ち入り検査があり、基準を満たさなければ営業許可が下りません。
このため、消防設備関連の費用も10万円〜30万円前後を見込む必要があります。
清掃業者や運営代行会社との契約初期費用
民泊運営を自分一人で行うのは大変です。そのため、多くのオーナーが清掃業者や運営代行会社と契約しています。
契約時には初期登録料やシステム設定費用などがかかるケースが多くあります。
また、運営開始前にスタッフの手配や清掃スケジュールの調整なども必要です。
初期契約費としては3万円〜10万円程度が目安になります。

空き家を民泊運営する際のランニングコスト

民泊は初期費用だけでなく、運営を続けるために毎月かかるランニングコストにも注意が必要です。ここでは代表的な維持費について解説します。
光熱費やWi-Fiなどインフラの維持費
宿泊者が滞在中に快適に過ごせるように、電気・ガス・水道などのインフラは常に使用できる状態にしておく必要があります。
さらに、観光客からのニーズが高いWi-Fiの提供も今や必須サービスとなっています。
特に夏や冬など、エアコンの使用頻度が高い時期は光熱費も上がりがちです。
インフラ維持費の目安は、月額1万円〜2万円程度と見ておくとよいでしょう。
清掃やリネン交換などの定期費用
民泊の衛生管理は宿泊者の満足度に直結します。
そのため、チェックアウト後の清掃やリネン交換は迅速かつ丁寧に行う必要があります。
自分で行うことも可能ですが、遠方に住んでいる場合や複数物件を運営している場合は清掃業者に依頼するケースが一般的です。
1回あたりの清掃費用は5,000円〜1万円が相場です。
予約サイトへの掲載手数料
民泊を運営するには、Airbnbや楽天ステイ、Booking.comなどの予約サイトを利用することが多いです。
これらのプラットフォームに掲載することで集客力は大幅にアップしますが、掲載手数料が発生します。
通常、予約金額の10〜15%が手数料として差し引かれるため、収益計算の際にはこの分も考慮しておく必要があります。
売上の約10%が掲載手数料として毎月差し引かれると想定しておくとよいでしょう。
運営代行会社の月額費用
民泊の運営を代行会社に任せると、清掃・予約管理・ゲスト対応などを一括して委託できます。
とくに本業が忙しい方や、遠方の空き家を活用する場合に重宝されます。
しかしその分、毎月の運営費用がかかる点に注意が必要です。
代行会社の月額手数料は、売上の15%〜30%が一般的です。
消耗品の補充費用
トイレットペーパーやティッシュ、洗剤、シャンプー、歯ブラシなどの消耗品は定期的に補充する必要があります。
これらが不足しているとゲストからの評価に影響を与えるため、常に在庫管理が重要です。
また、季節に応じて虫除けスプレーや加湿器なども必要になることがあります。
消耗品の月額費用は3,000円〜5,000円程度が目安です。
空き家を民泊として活用するメリット

費用がかかるとはいえ、空き家を民泊として運用することで得られるメリットも大きいです。ここでは主な利点を紹介します。
空き家の有効活用ができる
放置されていた空き家を活用することで、地域の治安維持や美観の向上にもつながります。
また、建物の劣化を防ぎ、資産価値を維持するという面でも有効です。
空き家を管理せずに放置しておくと、雑草や不法投棄などのトラブルも発生しやすくなります。
地域の観光資源として貢献できる
地方の観光地では、宿泊施設の不足が課題となっていることがあります。
空き家を民泊として提供することで、観光客の受け入れ先として地域に貢献できます。
また、ゲストが地元の飲食店や観光地を利用することで、地域経済の活性化にもつながります。
地域とのつながりを持ちながら運営できる点も民泊の魅力です。
賃貸より高収益が期待できる場合がある
民泊は短期宿泊で収益を得る仕組みのため、繁忙期には高い売上が見込めます。
特に観光地や都市部では、通常の賃貸物件よりも高収益を上げている例が多くあります。
ただし、稼働率や宿泊単価によって変動があるため、綿密な収益計画が必要です。
成功すれば、年間で数百万円の利益を出すことも可能です。
固定資産税対策にもつながる
空き家を放置しておくと、固定資産税の優遇措置が解除されてしまうリスクがあります。
しかし、民泊として活用することで「使用している建物」として評価され、優遇を受けられるケースもあります。
また、得られた収益で税負担を補えるため、資産を無駄なく運用できます。
空き家の維持費だけがかかる状況を避けられる点もメリットです。
まとめ|空き家を民泊として活用する際にかかる費用のポイント

空き家を民泊として活用するには、初期投資として数十万〜数百万円、運営コストとして毎月数万円の支出が発生します。
しかし、それ以上のメリットや収益が見込める可能性も高く、空き家問題の解決策としても注目されています。
費用と収益のバランスを見極めて、無理のない範囲で民泊運営を始めることが成功のカギです。
