この記事のまとめ
- 東京23区の民泊は区ごとに営業できる期間や曜日が異なり、さらに用途地域・文教地区・家主居住型か不在型かによっても条件が細かく変わる。
- 「条例がある区・ない区」「厳しい区・始めやすい区」のように単純に二分することはできない点に注意が必要。
- 2025年末〜2026年にかけて、千代田区・渋谷区・豊島区・墨田区・葛飾区・江戸川区などで条例の新設・改正や運用強化が進んでいる。
- 物件を契約する前に、正確な住所・図面を用意し、区役所・保健所・消防署・建築担当部署へ事前相談することが欠かせない。
目次
東京23区で民泊を検討するとき、まず知っておきたいのが「区によってルールがまったく違う」という点です。同じ住宅宿泊事業(民泊新法)に基づく届出でも、営業できる期間や曜日は区ごとに、さらには同じ区の中でもエリアや運営形態によって条件が異なります。この記事では、東京23区の最新の条例改正の動向と、民泊を始める前に確認しておきたい注意点を、初めての方にもわかりやすく整理します。
東京23区の民泊規制とは?
民泊を営業する方法には、大きく分けて3つの制度があります。
- 住宅宿泊事業(民泊新法):都道府県知事等への届出により営業できる制度。年間の営業日数に上限があるかわりに、比較的始めやすい。
- 旅館業(簡易宿所など):保健所の許可を受けて営業する制度。営業日数の上限がなく年中営業できるが、施設基準や許可取得のハードルは高くなる。
- 特区民泊:国家戦略特別区域法に基づく制度。対象区域や最低滞在日数、設備などの要件が住宅宿泊事業とは異なり、東京23区では一部エリアのみで活用できる。
東京23区で最も多く利用されているのは住宅宿泊事業(民泊新法)です。住宅宿泊事業法上の営業日数の上限は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で180日と定められています。これはあくまで国が定めた「上限」であり、実際にはこの範囲内で各区がさらに条例で制限を上乗せできる仕組みになっています。そのため、同じ23区の中でも実施できる曜日・期間の条件は区ごとに大きく異なります。
なぜ東京23区は区ごとに規制が違うの?
民泊新法では、区市町村が地域の実情に応じて独自の「上乗せ条例」を制定できることが認められています。東京23区は人口密度が高く住宅地と繁華街が近接しているエリアが多いため、以下のような目的で条例による制限を設けている区が少なくありません。
- 住環境の保護:住宅専用地域での騒音・ゴミ出しトラブルなどを防ぐための制限。
- 近隣トラブルの防止:不特定多数の宿泊者が出入りすることによる防犯・生活環境への影響を抑えるための制限。
- 学校周辺への配慮:文教地区など、子どもの生活環境に配慮するための制限。
こうした背景から、東京23区は全国的に見ても上乗せ条例が多いエリアとされています。物件を選ぶ際は、法律だけでなく区の条例まで確認することが欠かせません。
【一覧】東京23区の民泊規制まとめ
以下は、東京23区の民泊規制について、2026年7月時点で確認できる主な内容を区ごとに整理した一覧です。条例の新設・改正が続いている区も多いため、実際に物件で民泊を始める際は、必ず区の最新の条例・ガイドラインを確認してください。
| 区名 | 実施できる期間の目安 | 主なポイント(2026年7月時点) |
|---|---|---|
| 千代田区 | 用途地域・文教地区・家主居住/不在等で細分化 | 2026年7月1日から改正条例と新ガイドラインが施行。以前のルールを前提に判断できない。物件所在地・用途地域・常駐状況を区へ確認要。 |
| 中央区 | 原則、土曜正午〜月曜正午のみ | 区内全域が制限区域。祝日等は例外あり。届出7日前までに周辺住民へ周知、宿泊者への対面説明も必要。 |
| 港区 | 用途地域・文教地区に応じて異なる | 家主居住型・不在型で必要な管理体制も異なり、一律に判断できない。制限区域該当の有無を区へ確認。 |
| 新宿区 | 住居専用地域は曜日・期間制限あり | 商業地域と住宅地で条件が異なる。家主不在型は住宅宿泊管理業者への委託が必須。 |
| 文京区 | 制限区域は原則、金曜正午〜日曜正午のみ | 住居専用地域・住居地域・準工業地域・第一種第二種文教地区が対象。届出15日以上前に区指定書面の配付が必要。 |
| 台東区 | 管理体制(常駐の有無等)で異なる | 観光需要の高いエリアでも全物件が180日ではない。家主不在型・住居系地域は個別確認要。 |
| 墨田区 | 条例上の曜日限定はなし(運用ルールを厳格化) | 2026年4月1日施行の新条例で周知・緊急対応体制・事業者責務を強化。「すみだ民泊総合窓口」を開設し監視・指導も強化。2026年6月から処分基準の要綱も適用。 |
| 江東区 | 原則、土曜正午〜月曜正午のみ | 区内全域が制限区域。祝日前後は例外あり。 |
| 品川区 | 住居系用途地域中心に制限 | 商業地域か住居系地域かで条件が異なる。近隣周知・苦情対応・ゴミ処理等の確認も必要。 |
| 目黒区 | 原則、金曜正午〜日曜正午のみ | 区内全域が制限区域。届出前の近隣周知が必要。十分な営業日数を確保できるか事前に収支検討を。 |
| 大田区 | 制度によって異なる | 住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊の3制度が選択肢。事前相談が予約制のため、契約・工事前に相談が必要。 |
| 世田谷区 | 制限区域は原則、平日不可 | 低層・中高層住居専用地域など住環境保護の必要性が高い地域が対象。区域・祝日の扱いに例外あり。 |
| 渋谷区 | 住居専用地域+一部住居地域で制限 | 2026年の条例改正で対象地域とルールを見直し。2026年7月から緊急連絡先表示等のルールも強化。改正前後で扱いが異なる場合あり。 |
| 中野区 | 制限区域あり(許可制で平日営業も可) | 区長の許可を受ければ制限区域内でも平日営業できる制度がある。全事業者に届出前の周辺周知義務あり。条例改正を検討中。 |
| 杉並区 | 対象物件は原則、金曜正午〜月曜正午のみ | 低層・中高層住居専用地域内の家主不在型の届出住宅が対象。祝日前後は例外あり。 |
| 豊島区 | 営業期間より運用ルールの厳格化が特徴 | 2025年12月15日改正条例施行。届出書類・事業者責務・処分基準を強化。2026年6月、区として初の業務停止命令を発出。 |
| 北区 | 区独自の情報は限定的(個別確認要) | 上乗せ条例の有無だけで判断せず、マンション管理規約・賃貸借契約・消防設備・家主不在型の管理委託など全国共通の要件を確認する必要がある。 |
| 荒川区 | 区独自ルールあり(個別確認要) | 用途地域によって営業期間が異なる可能性がある。候補物件の住所を区の窓口へ伝えて確認を。 |
| 板橋区 | 区独自の情報は限定的(個別確認要) | 住宅要件・管理規約・賃貸借契約・消防設備の適合などを確認。候補物件の住所と図面を用意して区へ相談。 |
| 練馬区 | 住居専用地域等で制限 | 商業地域・近隣商業地域でも管理規約・賃貸借契約・消防設備等の要件を満たす必要がある。家主不在型は管理業者への委託が原則必要。 |
| 足立区 | 区独自の情報は限定的(個別確認要) | 営業期間だけでなく、周辺周知・標識掲示・苦情対応・緊急時の駆け付け体制・ゴミ処理等も確認が必要。 |
| 葛飾区 | 新規届出の制限対象物件は原則、土曜正午〜月曜正午のみ | 2026年4月1日施行の新条例・規則。家主居住型・管理者常駐・商業地域の住宅等は適用除外の場合あり。2026年3月31日までの適法な届出住宅には経過措置あり。 |
| 江戸川区 | 2026年7月1日から独自ルールを新設 | 「江戸川区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」及び施行規則が施行。「上乗せ条例がない」とする情報は2026年7月1日以降は正しくない。 |
東京23区の民泊規制を確認するときの注意点
東京23区の民泊規制は、「条例がある区・ない区」「厳しい区・始めやすい区」のように単純に二分することはできません。同じ区内でも、以下の条件によって営業できる期間や必要な手続が異なります。
- 物件の用途地域
- 学校や文教地区などの制限区域に該当するか
- 家主居住型か家主不在型か
- 管理者が施設に常駐するか
- 新規届出か、条例施行前からの既存施設か(経過措置の有無)
- マンションの管理規約
- 貸主から民泊利用の承諾を得ているか
- 建築基準法・消防法の基準を満たしているか
⚠ この一覧の使い方について
上記は2026年7月時点で確認できる各区の主なルールを整理したものであり、区の公式発表そのものではありません。とくに千代田区・渋谷区・豊島区・墨田区・葛飾区・江戸川区などでは2025年末から2026年にかけて条例の新設・改正や運用強化が進んでいます。物件を契約・賃借する前には、正確な住所と図面を用意し、区役所・保健所、消防署、建築担当部署へ事前相談することを強くおすすめします。
営業制限が厳しい区
「営業制限が厳しい区」といっても、制限のかかり方にはいくつかのパターンがあります。代表的なパターンを紹介します。
区内全域が曜日限定になっている区
用途地域を問わず、区内全域で「週末を中心とした一定の曜日」のみ営業可能とされているタイプです。
- 中央区(原則、土曜正午〜月曜正午のみ)
- 江東区(原則、土曜正午〜月曜正午のみ)
- 目黒区(原則、金曜正午〜日曜正午のみ)
- 文京区(制限区域内は原則、金曜正午〜日曜正午のみ)
平日の営業が制限される区
制限区域や特定の運営形態を対象に、平日の営業ができない・難しいとされるタイプです。
- 世田谷区(住居環境保護エリアは原則平日不可)
- 杉並区(対象は家主不在型のみ。原則、金曜正午〜月曜正午のみ営業可)
- 葛飾区(新規届出の制限対象物件は原則、土曜正午〜月曜正午のみ。ただし家主居住型・常駐・商業地域等は適用除外の場合あり)
- 中野区(制限区域内は原則不可だが、区長の許可を受ければ平日営業できる制度がある)
学校・文教地区周辺で制限がある区
文教地区など、学校周辺の区域を対象に制限が設けられているタイプです。
- 千代田区
- 港区
- 文京区(第一種・第二種文教地区)
住居専用地域で制限がある区
住居専用地域では制限がかかる一方、商業地域では条件が緩和されるとされるタイプです。ただし「商業地域なら必ず180日」と一律に判断できるわけではなく、家主居住型・不在型や管理者の常駐状況によっても条件が変わります。
- 新宿区・台東区・品川区・練馬区・渋谷区 など
比較的民泊を始めやすい区
前述の通り、東京23区の規制は「厳しい区・始めやすい区」と単純に線引きできるものではありません。ただ、区内全域を対象とした曜日限定のような一律の制限が明記されていない区や、制度の選択肢が広い区は、条件を整理しやすい傾向にあります(旅館業・特区民泊という選択肢もあわせて解説します)。
- 新宿区:住居専用地域は曜日・期間の制限があるが、商業地域と住宅地では条件が異なる。家主不在型は住宅宿泊管理業者への委託が必須で、独自の近隣対応ルールも確認が必要。
- 台東区:浅草・上野など観光需要の高いエリアを抱える区。ただし家主・管理者の常駐状況などの管理体制によって条件が変わるため、全物件が一律に180日営業できるわけではない。
- 墨田区:区内全域を対象とした曜日限定の制限は明記されていない一方、2026年4月施行の新条例で周知・緊急対応体制・処分基準などの運用ルールが強化されている。コンプライアンス体制を整えられれば選択肢になり得る。
- 大田区:住宅宿泊事業に加えて旅館業・特区民泊も選択肢になる区。事前相談が予約制のため、契約・工事前に区へ相談したうえで制度を選べる。
また、北区・荒川区・板橋区・足立区のように、区内全域を対象とした曜日限定のような制限が明確に示されていない区もあります。ただし、これは「規制がない」という意味ではなく、マンション管理規約・賃貸借契約・消防設備など全国共通の要件を満たす必要がある点、また区独自の届出手続やガイドラインが別途ある点には注意が必要です。
東京23区で民泊を始める前に確認すべきポイント
- 用途地域・文教地区:住居専用地域か商業地域か、文教地区に該当するかで営業できる曜日・期間が変わる。
- 家主居住型か家主不在型か:運営形態によって適用される制限や必要な管理体制が異なる。
- 管理者の常駐状況:区によっては、管理者の常駐の有無で営業可能な曜日・期間が変わる。
- 新規届出か既存施設か:条例改正の前から営業している施設には経過措置が設けられている場合がある。
- マンションの管理規約:管理規約で民泊利用が禁止されているマンションも多い。
- 貸主(オーナー)の承諾:賃貸物件の場合、貸主から民泊利用の承諾を得ているかどうかも必須の確認事項。
- 建築基準法・消防法の基準:消防設備など、施設が基準に適合しているかの確認が必要。
- 近隣住民への対応・ゴミ出しルール:事前周知や苦情受付体制の整備が求められる区が多い。
こんなケースは営業できる?
Q.マンションでも民泊はできる?
A.制度上は可能ですが、マンションの管理規約で民泊利用が禁止されているケースが多くあります。届出の前に管理規約と管理組合への確認が必要です。
Q.賃貸物件でもできる?
A.賃貸物件でも民泊は可能ですが、賃貸借契約で転貸や民泊利用が禁止されている場合があります。貸主(オーナー)の承諾が必要です。
Q.副業でも始められる?
A.副業として民泊を始めること自体は可能です。ただし家主不在型の場合は住宅宿泊管理業者への委託が必要になるため、日常的な運営を外部に任せる体制を整える人が多い傾向にあります。
Q.家主不在型でも可能?
A.可能ですが、国に登録された住宅宿泊管理業者への委託が原則として義務付けられています。また、区によっては家主不在型に対する制限が家主居住型より厳しく設定されている場合があります(例:杉並区の一部制限は家主不在型のみが対象)。
東京23区で民泊を始めるなら旅館業と民泊新法どちらがおすすめ?
- 民泊新法がおすすめなケース:初期費用や施設基準のハードルを抑えて始めたい人、まずは小規模に運営を試したい人、区の制限内の営業日数でも収益が見込めるエリアで運営する人。
- 旅館業がおすすめなケース:年間を通じて安定した営業日数を確保したい人、上乗せ条例による日数制限が厳しい区で本格的に運営したい人(ただし施設基準や許可取得のハードルは高くなる)。
| 民泊新法(住宅宿泊事業) | 旅館業(簡易宿所など) | |
|---|---|---|
| 営業日数 | 年間180日以内(区によりさらに制限) | 制限なし(年中営業可能) |
| 始めやすさ | 比較的始めやすい | 施設基準・許可取得のハードルが高い |
| 上乗せ条例の影響 | 受ける | 受けない(用途地域の制限は別途あり) |
よくある質問
Q.東京23区ならどこでも民泊できますか?
A.制度上は23区すべてで民泊新法の届出自体は可能ですが、区や用途地域、運営形態によって営業できる期間・曜日が大きく異なります。物件を選ぶ前に、対象エリアの条例を必ず確認しましょう。
Q.年間180日以上営業できますか?
A.民泊新法では180日が上限のため、それ以上営業したい場合は旅館業の許可取得や特区民泊への切り替えを検討する必要があります。
Q.一番始めやすい区はどこですか?
A.東京23区の規制は「この区が一番始めやすい」と単純に順位付けできるものではありません。同じ区の中でも、用途地域・文教地区の該当有無・家主居住型か不在型か・管理者の常駐状況によって条件が変わるため、候補物件ごとに区へ確認することが確実な方法です。
Q.条例は毎年変わりますか?
A.毎年必ず変わるわけではありませんが、2025年末から2026年にかけては千代田区・渋谷区・豊島区・墨田区・葛飾区・江戸川区など、複数の区で改正や運用強化が重なっています。運営中も定期的に区の最新情報を確認することをおすすめします。
まとめ
- 東京23区の民泊は区ごとに条例が異なり、さらに用途地域・文教地区・運営形態によっても条件が細かく変わる。
- 「条例がある区・ない区」「厳しい区・始めやすい区」という単純な二分では判断できない。
- 民泊新法だけでなく、旅館業・特区民泊という選択肢もあわせて検討する。
- 物件契約前に、正確な住所・図面を用意し、区役所・保健所・消防署・建築担当部署への事前相談を行うことが、安定した民泊経営の第一歩になる。
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